島根日日新聞掲載記事(2002年06月18日)

「無人の空撮システム」開発

松江高専と有限会社アイナスが共同研究/
ローコストで省エネ、低公害につながる/飛行船の基礎実験開始

 航空写真撮影(空撮)や航空測量に使われている有人の飛行機やヘリコプターに代わる、「無人の空撮システム」の開発が、産学連携の共同研究によって進められている。
このほど、その飛行体となる飛行船(試作機)が完成し、今月から室内での基礎実験が始まった。
「無人空撮システム」に必要な自律航行に関する技術はいまのところ確立されておらず、この開発が成功すれば、ローコストで省エネ、低公害にもつながる飛行体が誕生する。

 共同研究を行っているのは、松江工業高等専門学校(松江高専)電子制御工学科と、コンピュータ・ソフトウェア開発の有限会社アイナス(内田博之社長、出雲市小山町)。

 現在、空撮などに使われている飛行機やヘリコプターは、多大なコストを要する上にエンジンからの排気ガスによる大気汚染、騒音被害も懸念されている。
 これらの問題を解決するには、低公害で無人の空撮システムの開発が必須となるが、そのベースとなる飛行体として今回着目されたのが、飛行船だ。
 飛行船は、航続時間や安全性、省エネ、低騒音、小回り性能などの観点から、総合的に飛行機やヘリコプターなどに勝るという。

 松江高専とアイナスは、県産業振興財団から研究費の補助金を受け、昨年六月から本格的に研究をスタート。到達地点を指示するのみでその地点へと自動的に飛行船を航行させるためのシステム開発と、飛行船本体の開発に取り組んでいる。
 低価格でのシステム開発実現のために、カーナビに使われているGPSや携帯電話などを活用。
飛行船の自律航行システムは、

(1)飛行船の振動や風などの外乱による航路のずれを最小限に抑制するための「機体制御技術」
(2)指示された到達地点と現在地点から、航路を自動的に算出し、その航路に沿って移動する「航路決定・移動技術」
(3)指示内容の変更や現在地点のデータ送信
など、あらかじめ設定した通信点との「相互通信技術」、などをもとに、約八カ月かけて構築した。

 この自動航行システムを、飛行船本体(全長六m、直径二・三m、電動式、浮力がヘリウムガス)と組み合わせ、先月、試作機を完成させた。総研究費は千三百五十万円。
 今月十四日には、出雲市の出雲ドーム内でこの試作機を使った第五回目のフライト基礎実験が実施された。

 完成予定の自律航行システムは、パソコンから携帯電話を使って、携帯電話が搭載された飛行船に到達地点などを指示するが、今回はパソコンにあらかじめ目標地点を設定、搭載された地磁気センサー(方位が分かる)とGPSにより、パソコンから指示された七十m先の通過点二カ所を経由し、蛇行しながらも発着点まで移動した。室内とはいえ出雲ドーム上空は無風ではないため、今後は、風による航路のずれを抑制するための機体制御法の改善や、CCDカメラを搭載することで、地表パターンの認知や突起物などの障害物への衝突を回避するためのリアルタイム立体画像認識などの機能を兼ね備えるほか、得られた結果から各技術の検証を行っていく。

 実験航行は、今年度いっぱい続けられる予定だ。

「無人の空撮システム」開発.jpg

実験の様子

※転載許諾済(島根日日新聞)

連絡先

有限会社 アイナス
島根県出雲市小山町227
Tel.0853-20-2825

【特商法に基づく表記】

検索